Ofcomによる新しい詐欺電話ブロック規制:英国電気通信市場への影響

Ofcomによる新しい詐欺電話ブロック規制:英国電気通信市場への影響

Juniper Research (ジュニパーリサーチ) 社
Posted by Elisha Sudlow-Poole, Senior Research Analyst


世界的に見て、規制当局による包括的なロボコール(自動音声電話)対策は不足しています。主要な規制機関、例えば米国のFCC(連邦通信委員会)は、発信者ID情報の認証と検証を目的としたSTIR/SHAKEN(Secure Telephone Identity Revisited/Signature-based Handling of Asserted Information Using toKENs)やRMD(Robocall Mitigation Database)などのイニシアチブを展開しています。STIR/SHAKENのフレームワークは米国で約5年間運用されていますが、RMDはまだ米国で完全には展開されていません。にもかかわらず、米国では現在に至るまでロボコールによる詐欺被害は減少していません。

これは、最も洗練されたロボコール被害対策でさえ、利用者をうまく保護できていないことを浮き彫りにしています。今年のロボコールによる金銭的被害の総額の50%以上が米国に起因しています。

しかし、ロボコールによる詐欺電話の問題は米国に限ったことではありません。また、ロボコール詐欺のみならず、税金、銀行、公共料金、宝くじ、健康関連の電話など、AIと人間による迷惑電話や詐欺の電話など、問題は広がっています。

今週、Ofcom(英国情報通信庁)は、電話プロバイダー(固定電話・携帯電話の両方を含む)に対し、CLI(Call Line Identification)やCall for Inputなど、迷惑電話や詐欺の電話から利用者を保護するためのより厳格な対策を実施するための6カ月間の猶予を与えたと発表しました。英国の主要なモバイル・ネットワーク・プロバイダーやブロードバンド・プロバイダーのほとんどは積極的に対応していますが、これらは必ずしも効果的ではなく、2024年には英国の利用者だけで1億2900万件以上の詐欺ロボコールを受信しています。

図1:英国の加入者が受信した詐欺ロボコールの総数(m)、2020年~2024年
Source: Juniper Research

これを受けて、英国では電話事業者が迷惑電話や詐欺電話の防止策を展開しています。例えば、2024年7月、英国の携帯電話事業者EEはScam Guardと呼ばれるサブスクリプションを開始しました。このサブスクリプションは、オンライン上の脅威から利用者を守るため、利用者に月額1ポンドの追加料金を請求するものです。このソリューションでは、スパムおよび詐欺電話のラベリング、ダークウェブの監視、EEのサイバー・セキュリティ・デュオへの3カ月間の無料アクセスが提供されます。

スパムおよび詐欺電話のラベリング:アダプティブAIシステムを活用し、着信の側面をリアルタイムで分析し、疑わしい可能性のある着信を検出して加入者に通知
ダークウェブ監視:銀行のキャッシュカードの詳細や電子メールのログイン情報などの個人情報がダークウェブ上に表示された場合に、加入者に警告を通知
サイバー・セキュリティ・デュオ:ウィルス、マルウェア、オンラインの脅威から最大2台のデバイスをリアルタイムで保護。また、強力なパスワードを作成するためのツールも提供。

Scam Guard導入の目的は、EEの利用者を不審な電話から守るだけでなく、利用者者を教育し、自分たちが利用している技術について理解を深めてもらい、より安全な生活を送るためにどのような対策を講じることができるかを知ってもらうことです。

しかし、英国の通信市場では、こうした詐欺やスパムの電話を軽減するソリューションを提供する責任は、通信事業者やブロードバンド・プロバイダーだけにあるわけではありません。英国政府はオンライン詐欺に対する新たな国家キャンペーンを積極的に展開してきました。2024年2月、英国政府は「Stop!Think Fraud」キャンペーンを発表し、詐欺から身を守る方法に関する情報を掲載したウェブサイトとともに、助言ビデオを公開しました。このキャンペーンは、英国政府が2023年5月に開始した詐欺防止のための戦略の一環でした。これは電話番号詐称詐欺や新型コロナウイルスに関する詐欺の電話/Eメールなど、気をつけるべき詐欺について詳しく説明したアドバイスページを作成することによって行われました。

Ofcom、より厳格な詐欺電話ブロック施策を導入へ

つまり、Ofcomの今回の発表は、英国における詐欺電話を減らすというコミットメントの次のステップということのようだ。しかし、この発表を受けて、何が変わるのでしょうか。

まず、着信通話を考える場合、ネットワーク番号(発信元)とプレゼンテー ション番号(発信者の特定)があります。大半の場合、この2つの番号は同じですが、アウトソーシングされたコールセンターが企業に代わって電話をかける場合など、2つの電話番号が異なる場合があります。

これに伴い、OfcomはCLIガイダンスを更新し、英国番号をプレゼンテーション番号として表示する国際電話にも着信拒否を適用します。これにより、これまで詐欺師が海外から英国の番号になりすますことを可能にしていた潜在的な抜け道が取り除かれることになります。英・BTグループなど多くの通信事業者がすでに自主的にこの対策を導入しているが、Ofcomは英国の電気通信業界に対し、2025年1月29日までにこのソリューションを実施するよう求めている。

次に、OfcomはCalls for Inputガイドラインの変更案についてフィードバックを求めています。提案されている変更は、海外からの「+447」番号による通話をブロックすることを事業者に義務付けるものです。しかし、これは英国の合法的なローマーにとって重大な意味を持ちます。これに対する技術的な解決策としては、海外からかかってくる携帯電話を積極的にチェックし、識別する国際ゲートウェイプロバイダーを提供することなどが提案されていますが、Ofcomは2025年春にさらなる協議を行う予定です。

ブランド・コーリングが詐欺電話軽減の追加戦略に

図2:ブランド・コールとCNAMの比較
Source: Juniper Research

私たちジュニパーリサーチは、これは米国を含む国々ですでに試行されている取り組みであるが、英国の携帯電話プロバイダーやブロードバンド・プロバイダーにとっても、携帯電話の利用者に対する詐欺を減らすためにも重要な分野であると認識しています。

ロボコールの頻度と複雑さが増していることから、英国の関係者はロボコールの軽減技術に焦点を当てた戦略を策定する必要があります。したがって、詐欺被害軽減策の成功率を向上させるためには、詐欺被害を軽減するベンダー、携帯電話事業者、規制当局の間で協力的なアプローチを採用する必要があります。Ofcomが関与し、関係者にこれらの対策をより積極的に行うよう求めることは、詐欺電話数の削減を達成するための第一歩となります。

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