NISTが量子コンピューティング耐性の基準を発表、脅威はいつ到来するのか?

NISTが量子コンピューティング耐性の基準を発表、脅威はいつ到来するのか?

Juniper Research (ジュニパーリサーチ) 社
Posted by Alex Webb, Research Analyst


量子コンピュータの発展は、量子コンピュータがもたらす計算能力の大幅な向上により、現在のセキュリティに対する根本的な脅威となっています。現在のところ、量子コンピュータの攻撃に対する防御は限定的であり、将来的に機密データが量子コンピュータの攻撃にさらされる可能性があります。しかし、今後数年間で、特に医療サービスや通信ネットワークなどのミッション・クリティカルなインフラにおいて、ポスト量子暗号の採用が加速すると予想されています。

従来のコンピュータとは異なり、量子コンピュータは量子ビットをベースにデータの保存と処理を行います。量子ビットは、従来のビットのように0か1の状態で機能することができますが、その両方の重ね合わせの状態にもなり、1と0の重み付けされた組み合わせを同時に提供することができます。量子ビットを組み合わせると指数関数的に拡張できるため、N個の量子ビットで2N個の状態を表現できるようになり、量子コンピュータの計算能力が大幅に向上します。例えば、2つの量子ビットで4ビット、3つの量子ビットで8ビット、4つの量子ビットで12ビットの情報を格納できます。

この計算能力の大幅な向上により、非対称暗号アルゴリズムは時代遅れになるでしょう。これらのアルゴリズムはデータの暗号化やデジタル署名に欠かせないものですが、解読が容易になります。これらのアルゴリズムは一方向性関数に依存しており、計算するのは簡単ですが、従来のコンピューティングでは破るのに時間がかかります。

しかし、量子コンピュータは今後10年以内にこれらの暗号を破ることができると予想されています。これは、非対称暗号アルゴリズムがサイバーセキュリティで多用される認証や機密保護の基礎となっていることから、重要な意味を持ちます。例えば、非対称暗号アルゴリズムはインターネットではTLS(Transport Layer Security)やSSH(Secure Shell)に使われています。その結果、ポスト量子暗号への移行は、将来のグローバルなサイバーセキュリティを確保する上で極めて重要になります。